白い猫と60年ぶりの再会。
あることをきっかけに出会った本『暇と退屈の倫理学』。
最近はもっぱら暇や心の余裕について考える日々が続いてます。
この本を、心が最上級に穏やかになれる場所で読みたい。
そんな願いで、パンと紅茶を買い、上野恩賜公園へ。
人がいっぱいいるところは好きではないのですが、あまりにも紅葉がきれいだったものですから、ベンチに座り、早速ページを開きました。
本を読んでると、優しくて、甘い鳴き声が後ろから聞こえて…
ベンチの下から、真っ白な猫ちゃんが。
寒かったのでしょう。しまいには、私の膝の上にちょこんと乗ってきて。
小さいとき、猫が嫌いだったこともあり、扱い方分からず直立不動の私。
けど、とっても温かくてカイロのような…とってもホッとしました。
そうこうしてると、ご年配の男性と女性が隣に座ってきて、猫を膝に乗せている私を珍しがったのでしょう。
「かわいい猫ですね。」って話しかけてくれて。そこからいろんなお話をしました。
「この人パンダが見たいっていうもんだから、来たんだけど1時間待ちだったので、諦めたのよ。」
私「今日は、どちらから?」
「この人は新潟」
「僕は、新潟の糸魚川っていう富山の近くの方から来たんだ」
一見、夫婦に見えたふたり。だから、この人はという言葉が不思議に感じました。
私「一緒に来られたわけじゃないんですか?」
「私は、松戸なのよ。中学と高校の同級生でね。60年ぶりに再会したの。まあ、同窓会で少し会ったのだけど、ちゃんと約束して話すのは60年ぶりかな。」
「僕がお誘いしてね。デートってやつだよ。」
「まあ、この人ったら。」
おふたりは、幼なじみ。今年で80歳なんだそう。そんな風には全然見えませんでした。
糸魚川市は翡翠(ひすい)で有名なまちらしく、おふたりも昔は海岸によく翡翠を探しに行ってたそう。とても自慢げに語ってくれたのが、印象的でした。
男性は、糸魚川市が合併する前にあったまちの村長さんだったらしく、今はデイサービスのグループホームを運営しているそう。孫が就職してくれて、継いでくれるんだと嬉しそうに語ってくれました。
男性は今日帰ってしまうみたいで、おふたりとも名残惜しそうに、笑いながらも少し切なそうな顔をしていた気がしました。
東京、北の玄関。上野。
出会いがあり、別れがあるこのまち。誰かとの別れを間近で見たのは初めてでした。
そろそろ、日も沈んできました。
私たちもお別れしないといけません。
私たちを出会わせてくれた白い猫。
ひとり上京してきた私に「あなたのおじいちゃんとおばあちゃんと思ってくれてもいいのよ」と言ってくれた、ふたり。
空が澄んでいた今日。帰りの電車から見えた富士山。
とってもいい1日。絶対、忘れたくない1日でした。
おふたりがまた会えること。おふたりとまた会えることを願っています。
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